第12弾「ほろ苦いファーストトレード」エキサイティングで楽しいと思えるかどうか|西原宏一氏
僕が「初トレード」を経験したのは、銀行に入行しdealing roomに配属されてからの事であるため、個人投資家の方とはちょっと事情が違います。しかし、初トレードというのは、FXトレードをエキサイティングで楽しいと思えるかどうかを決める重要な時期であることは個人投資家の方と変わりありません。そのため、初トレードではなく僕の初期のトレード時代の経験をご紹介しようと思います。
1)FXトレードはエキサイティングであり、収益を上げるのも簡単?
Citibankに入行したばかりの僕は、すぐナイトシフトに配属され、日本時間の17時~24時までの為替をカバーするという業務につきました。僕がトレードを始めた年は、*「プラザ合意」というイベントにより、ドル円が歴史的な暴落を演じるタイミングになります。
*プラザ合意=合意の主な内容は、「参加各国が外国為替市場に協調介入して、ドル高を是正しましょう」というもの。 発表後1日の間に円相場は1ドル235円から約20円下落。 翌年には150円台になり、円高ドル安という目的は達成される。
毎日のようにドル円が急落するのをみせられれば、新人の僕でさえドル円はショートにすれば儲かるということはわかります。入行当時はジュニアトレーダーであるため、日をまたいでkeepできるpositionは200万ドルまでと決められていました。そこで勤務を終えて退社する時に、ドル円をlimitいっぱいの200万ドルまでshortにして帰宅します。
翌朝8時頃、銀行に連絡するとドル円が2~3円急落しているので、買い戻して利益を確定します。当日出社すると東京市場では、なぜかドル円は買い戻されており、1~2円反発しています。そのため再び退社前に、同じように200万ドルshortにし、翌日2~3円急落しているところで買い戻します。
これを毎日のように繰り返していると、ド素人のジュニアトレーダーであるにも関わらず日々収益が増えていきます。これは自分にとって極めて重要な経験となります。つまりFXトレードとはエキサイティングであり、かつ収益もおもしろいように増えるので、これを仕事として続けていきたいと思わせてくれたわけです。収益が増えれば、トレーダーとして認められ昇格もします。そうなるとさらに相場を研究するようになります。つまり、チャートの勉強もし、ファンダメンタルズの本を読んだりするようになります。
このように始めてのトレード、初期のトレードというのは、トレーダーにとって非常に重要な時期となるわけです。
個人投資家の方にとっての初トレード、そして初期のころのトレードは、僕の場合よりさらに重要です。なぜなら、僕は業務としてFXトレードを始めたので、トレードで壁にぶつかっても簡単にあきらめることはできません。しかし、個人投資家の方は、FXトレードを初めるも、結果がでなければ、簡単にやめてしまうためです。
僕は過去10年以上にわたってFXのメールマガジンを配信させていただいていますが、初期の頃つまり10年以上メルマガをとって頂いている読者の方も数多くいらっしゃいます。長期に渡ってメルマガの購読を続けて頂いているという事は、FXトレードも長期に渡って続けているという意味になります。トレードを続けられている理由は簡単です。
初期の頃の大相場で儲かったという成功体験が強烈であるため、トレードが面白いとる事が、FXトレードを継続している理由のようです。10年前といえば、まずSNB(スイス国立銀行)による市場介入でのEURCHFの暴騰。
アベノミクスによってドル円が約45円(80円から125円まで)も上昇する大相場。そして、2015年~2016年にポンド円が75円暴落した時の成功体験があり、それ以来メルマガを続けているという読者の方も多数。
2020年であれば2ヶ月半で60円から78円へと暴騰した豪ドル円の上昇トレンド。こうした相場はFXトレードの醍醐味であり、一度はまるとやめられない魔力があります。
前述のEURCHFの暴騰は介入ですので価格はワープするため異次元ですが、明確なトレンドがあるマーケットは毎日のように値を上げ(または下げ)トレード自体がエキサイティング。
加えて収益も毎日増えていくため、FXトレードの醍醐味を味わえるわけです。ただそのような大相場が毎日のように訪れるわけではありません。今回のコラムの「初トレード」に視点を戻すと、トレードの初期にそのような大相場に巡り合うことはまれです。
では、「どうすればいいのか?
逆説的にいえば、初トレードの頃は、そうした大相場にめぐりあわないほうがいいと思っています。それは、相場の初心者の時にそうした大相場で儲かるとは限らないためです。仮にいきなり大きく損失を出すと二度とFXトレードをやろうとは思わなくなります。
結果、初期のころのトレードは、あまり大きくriskをはらず、小さなトレンドでも収益を積み重ねていき、大相場に備えるというのが重要だと考えています。初心者の時に、いきなり大相場に出会えた場合は、妙に理論武装をせず、素直に相場についていき、相場の醍醐味を味わうといったところでしょうか?
結論として、初期のころのトレードはどんな相場に出会えるかは全くわかりませんが、無理をせず、自分が相場を楽しめているかどうかを考えることが重要ではないかとおもっています。
相場を楽しめていると言うことは、少なくとも大きな損失は出しておらず、少しでも長くトレードを続けられることを意味します。長く続けることができれば、やがて大相場に出会い、FXトレードの醍醐味を味わえると考えています。
それではまた次のコラムでお会いしましょう!
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株式会社CKキャピタル代表取締役・CEO
青山学院大学卒業後、1985年大手米系銀行のシティバンク東京支店入行。
1996年まで同行為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後活躍の場を海外へ移し、
ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店で
プロプライアタリー・ディーラー等を歴任し、現在(株)CKキャピタルの代表取締役。
ロンドン、シンガポールのファンドとの交流が深い。